9月18日時点で人口の53.7%が2回の接種を完了しており、人口の62.9%が1回の接種を終えているものの、接種率が伸び悩んでいるアメリカでは、ワクチン接種を義務化する動きが進んでいます。バイデン大統領は、9月9日の演説で、100人以上の従業員を雇用する企業の雇用主がワクチン接種または週1回の検査を確認するよう要請しました。また、外国人の米国への入国条件として、新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける方向で調整に入っていると報じられています。さらに9月下旬からは、2回目の接種を終えてから8カ月が経過した人を対象に、3回目の追加接種も始まる予定です。

 9月14日には、ワクチン接種証明の提示やマスク着用などのルール下のもと、1年半ぶりにニューヨークのブロードウェイミュージカルが再開しました。ワクチン接種者に対する規制の緩和が進むにつれて、街には活気が戻りつつあるようです。

 一方の日本はというと、規制緩和は進んでいるようには思えません。緊急事態宣言が続いており、議論すら進んでいません。接種開始が大幅に遅れたワクチン接種はというと、幸いにも順調に接種率は伸び、9月16日時点で人口の53.3%が2回の接種を完了しており、人口の65.6%が1回の接種を終えました。英国の接種率には及びませんが、アメリカの接種率をすでに超えたことは注目に値すると思います。さらに、新規感染者数は、2021年8月26日の24317人をピークに減少を続けており、9月19日時点で3408人と前回のピーク(2021年5月15日の6331人)を下回っています。

 ワクチン接種が順調に進み、また新規感染者数が減少している今、規制緩和せずして、いつ行うつもりなのでしょうか。外来診療の現場でも、風邪症状を訴えて受診する人は8月中旬から比べると激減しており、PCRの検査数も、陽性が出る割合も減っています。

 通勤電車は、満員とまでは行かずとも乗っている人の数が増え、座れないことが多くなってきました。「時差出勤のお願い、会話を控えて、緊急事態発令中……」なんていう車内アナウンスが流れる一方で、乗客も増え、マスクを着用しながら会話する声で少々賑やか、なんていうことも増えてきた印象を受けます。

 南カリフォルニア大学のFrancisco氏らの報告によると、2020年3月10日から2021年3月31日にかけて米国の成人8003人を調べたところ、新型コロナウイルスワクチンの1回目の接種を境に、気分の落ち込みが改善していたといいます。9月の3連休は、各地で人出が増加し、高速道路の渋滞も発生しました。ワクチン接種を済ませたことや感染者減少による安堵感や、気分の落ち込みの改善が影響しているのかもしれません。
 
 ワクチン接種が進み、新規感染者数が大幅に減少している今こそ、ワクチン接種を済ませた人から規制を解除していくタイミングだと思います。コロナのワクチン接種を終えているにもかかわらず、PCR検査で陰性が出ているにもかかわらず、入国時に2週間の隔離を要求するという規制のままでは、「日本に来るな」と言い続けるのと変わりないのではないでしょうか。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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