実際に、ワクチン接種を2回終えた人が人口の77.2%を占めるシンガポールでは、9月に入り感染者が増加しています。「ワクチンが感染を防ぐ割合は、4割程度にとどまるようだ」と、オン・イエクン保健相はコメントしています。ワクチン接種を2回終えた人が人口の63.6%を占めるイスラエルでも、同様のことが生じています。イスラエル保健省が7月下旬に公開したデータによると、イスラエルにおけるファイザー製のコロナワクチンの感染予防効果は1月から4月上旬の95%に対し、6月下旬から7月上旬には39%まで下がっていたといいます。

 さらに、Yinon氏らの報告により、ファイザー製のコロナワクチンの2回目の接種から5カ月以上過ぎた60歳以上の高齢者への3回目接種によって、3回目の接種をしていない群に比べて感染率が11分の1ほどに低下したことがわかりました。

 これらの知見は、コロナワクチンの2回接種では重症化は防ぐものの予防効果は低下する、3回目の追加接種を行えば、予防効果をあげることができそうだ、ということを示しています。すでに世界の多くの国で3回目の追加接種が検討されており、イスラエルでは3回目の接種が開始されています。

 ワクチンを打てば、少なくとも死亡するリスクは大幅に減るため、接種率が進んできた今、世界では、感染対策と経済活動の両立をどう行なっていくかという議論に進んできています。コロナの治療薬の開発も進んでおり、年内には申請される見通しです。こうした状況を受けて、定期的なPCR検査を継続した上で、ワクチン接種を済ませた人から制限を解除して経済を回していこうと、世界は動き出しているのです。

 実際に、ワクチン接種の進む欧米では、ワクチン接種が完了した人に対する行動制限の解除がすでに進んでいます。9月17日時点で人口の65.0%が2回の接種を完了しており、人口の71.2%が1回の接種を終えている英国では、来月にも渡航制限が大幅に緩和される見通しです。先日、英国政府は、「10月4日午前4時より、イングランドへの国際渡航の規則は、赤・黄・青の3段階に対象国を分類していたシステムから、赤リスト国のみの設定と、それ以外の国からの入国については簡素化した渡航手順へと変更する」ことを発表しました。日本から英国に入国する14日前に対象国の保健当局が定めたワクチン接種を終えている日本人は、出発前のウイルス検査や入国後の10日間の自主隔離が不要となり、入国後の検査2回のみに大幅に緩和されることになります。また、50歳以上の人らを対象に3回目の追加接種を行うこともすでに発表されています。

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アメリカでのワクチン接種の最新の動向は?