タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
![エッセイスト 小島慶子](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/497mw/img_49bdd34eb2e84b5f195bf062bf553e3236940.jpg)
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政治家の会見や記者のリポートの棒読みが気になることはありませんか。かつてアナウンサーとしてテレビでニュースを読んでいたとき、記者との掛け合いは台本で決まっていました。ラジオではぶっつけ本番で記者とやりとりするのが当たり前だったのに、テレビでは映像を整えることが重視され、予定外の出来事が起きないよう入念に準備する。生放送で「それでは現場の○○さん?」と呼びかけ、棒読みで答える記者とやりとりを演じながら、「この茶番は何だろう」と違和感を覚えたこともありました。
欧米メディアで記者として働く知人たちは、日本の記者が事前に用意した原稿通りに中継をすると知って驚いたそうです。本番でキャスターから予想外の質問をされたり、事前準備と違うテーマでいきなり中継を振られたりするのは当たり前で、それに臨機応変に答えられる能力があるからこそ、自分たちは記者として採用されているのだと。