温かい食事を準備
温かい食事を準備

 インフレは収入が乏しい人たちの暮らしを直撃している。帝国データバンクが発表した「食品主要105社」価格改訂調査によると、11月に値上げを予定しているのは833品目。「今月と12月に予定されているものを含めると本年は2万743品目が値上がりし、平均値上げ率は14%」になるという。

 筆者は今年4月から毎月1~2度、支援の様子を取材してきた。並んでいるのは60代前後の男性が大半だが、老夫婦もいれば、体の不自由な人もいる。なかには子供を連れた母親の姿もあった。毎回、ベビーカーに3~4歳の男の子を乗せた年配の女性、乳児と思われる女の子を抱く若い母親、姉妹を連れた女性を見かける。時には小学生くらいの子供たちだけで来場していることもある。

 6月ごろから20~30代と思われる男女が増えてきたのも見逃せない。困窮者の裾野は徐々に広がってきている、と言うのが実感だ。

 10月29日には、食料品の他に500円分の「全国共通お食事券ジェフグルメカード」も配られた。都内の派遣会社で働くヤスオカさん(仮名、54)が、こう説明してくれた。

「食事券も不定期なんだけど、これのメリットは、飲食店で温かい食事を食べられることもさることながら、金券ショップで450円前後で買い取ってもらえること。たかが450円であっても手元に現金が残るのはありがたい。ここへ来る交通費の足しにもなるしね」

 ところが、この日は想定以上に行列ができ、30人ほどに食事券が渡らなかった。数人前でそれが判明した40代くらいの男性は「俺の牛丼が……」と絶句。「交通費がもったいないから、練馬区内の自宅へは2時間半かけて歩いて帰る」と肩を落としていた。

 そして今月5日。午後2時ちょうどに「お待たせしました」のアナウンスで、配布が始まった。

 この日のセットは、アルファ米2袋にビスケットやせんべい、缶詰、トマトにミカン、りんごなど。ほかにアルコール消毒液、液体せっけん、マスクなどの衛生用品と「新宿区の保健所からの依頼で、無料の結核検診のお知らせが入ったポケットティッシュもお配りしました」(大西さん)。

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