この惨状こそ、安倍・菅の政権1強の9年間で民主主義が劣化したことの表れでしょう。
現在、緊急事態宣言を発令しているのはG7で日本だけです。
感染者も死者も少ない日本で、なぜ緊急事態宣言を続けなければならないのか。政府は病床逼迫が理由としていますが、世界で病床数が最も多いにもかかわらず医療が逼迫するのは、やり方が悪いからです。新型コロナ医療の基本を規定しているのは、感染症法です。感染症法の主体は国民ではなく国家であり、この法を変えないと状況は変わらないでしょう。そして、それを変えるのが政治の仕事です。
菅義偉氏の退陣は、周囲の技術官僚をコントロールできなくなった結果と見ています。9月に発令された厚生労働省の人事では、医系技官のトップの医務技監は留任しました。つまり、厚労省は方向転換しないということ。
次の政権でも、医療政策は迷走が続くと思います。
ただし、専門家の間違いを指摘し、患者中心の治療をすべきであると、アカデミズムとメディアが訴え、世論が支持するのであれば、変わると思います。
(構成/編集部・井上有紀子)
※AERA 2021年10月4日号