※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 患者を担当した同大血液浄化療法科教授の土谷健医師は当時を振り返って言う。

「透析患者さんはコロナにかかると重症化しやすいため、感染したら無症状や軽症でも入院することが決められています。しかし、隔離された個室でかつ、透析のできるベッドの数は限られており、当院でも受け入れられるのは6人くらいまで。この時期は他の病院もいっぱいでしたから、本当に慌てました」

 幸い男性の透析の状態は安定していた。高くなると重篤な不整脈を引き起こす血液中のカリウムの量も問題はなく、過剰な水分による体重増加も軽度だった(透析患者は尿を出せないため、からだに水分がたまり、体重の増加が起こる)。1日なら透析をせずともなんとかもちこたえられる状況だ。

 患者自身も所用をすませたいと言うので、施設では家族に連絡を取り、感染対策をとってもらった上で、自宅にいったん、帰ってもらった。

「結局、その日はベッドが空かず、患者さんは翌日からの入院となりました。すぐに透析を開始しました。患者さんは土・日と合わせ3日間透析をしていないので、これがギリギリ。ベッドが空かなければ他の方法を考えなければならないところでした」(土谷医師)

 透析患者の入院については日本透析医会、日本透析医学会、日本腎臓学会の3学会が連携し、調整にあたっている。それでも第5波のピーク時は入院ができず、自宅待機となったケースが出たという。

 入院できなかった透析患者が、透析を受けるために、他の患者がいなくなった夜間、保健師に送迎されて、施設で透析を受けたケースが報告されている。

「透析患者さんがコロナに感染した場合、隔離された病室に出張用透析システムという、個人用の透析装置を持ち込むのが一般的です。この機械の操作、管理のために透析中は技師が一人、完全感染防御の状態で、部屋でつきっきりになります。長時間、患者のそばにいて感染リスクが高いため、当院では、患者さんがコロナから回復するまでの間、自宅に帰らず、ホテル住まいをしてもらっています。なかなか大変なことです。このように、専門のスタッフも必要ですので、第6波があることも念頭に、さらに体制を整える必要があると考えています」(同)

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