土谷医師によれば、「ほとんどの透析患者さんは感染したときの怖さを知っているので、繁華街には行きません。皆さん、すごく頑張っていて、感染者の数自体は少ないのです」と言う。

 感染ルートはほとんどが家庭内か透析施設での感染だ。

「透析施設でのクラスターは第3波で多かった。このため、現在は『透析日は自宅で体温を計測し、高い場合はすぐに施設に連絡する』など、より徹底して感染対策がおこなわれ、送迎バスも、透析が終わった時点で体温が高めだった人は、バスに最後に乗ってもらい、他の患者との接触時間を減らすようにするなど、さまざまな工夫をしています」(同)

 なお、同じ透析でも自宅でおこなう腹膜透析ではコロナの罹患率は通院の透析患者よりも、低いとされている(ただし、発症した場合の死亡率に差はみられない)。

「在宅医療であるため施設に通わなくてすみ、感染機会が減らせることが大きな理由と考えられています。このような利点から、国によっては“透析を始めなければならない患者は腹膜透析を始めるべし”といった勧告が出ています」(同)

 家庭内では、まず、最初に免疫力が低下している透析患者が発熱する。しばらくして家族が濃厚接触者だったことなどから、感染が判明するケースが多いという。

「最も重症化しやすいのは高齢で、他の病気も併せ持っている患者さんです。驚くほど、急速に悪化の経過をたどります。私自身、長く診てきた患者さんをこれまでに3人亡くし、非常に残念な思いでいます。ご家族に患者さんがいる場合は、特に若い方は感染させないように気をつけてあげてほしいです」(同)

 人工透析については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、実績ある病院を掲載している。特設サイト「手術数でわかるいい病院」で無料公開しているので参考にしてほしい。

(文/狩生聖子)