それでも前田は、8月下旬に「右肘靱帯の損傷」と診断されるまで先発として投球を続けていた。それまでを振り返ったミラー記者は、前田に対して次のような同情を寄せている。

「ケンタは登板毎に良いことが1つ、悪いことが2つ起こるという状態を繰り返し、フラストレーションも溜まっていたと思います。彼の右肘は、(肉体的にも精神的にも)本当に痛かったはずです」

 9月1日に手術を行なった前田は、それまでに21試合に登板し、6勝5敗、防御率4.66の成績で今季を終えた。昨季メジャー1位をマークしたWHIPは1.30で、昨季とはあまりにもかけ離れている。理由が明らかになった今ではミラー記者も、「(不調だった理由の)全てが理解できました」と納得したようだった。また、同記者は前田が手術に前向きであったことにも安心している。

「最初は手術を受けることに抵抗していたと聞いていました。しかし、(受ける決断した後は)手術について話す彼の姿は、非常に明るくなったように見えました。かつての速度とコンロールを取り戻し、以前のようなピッチングができるようになることを、本人が一番楽しみしている様子が感じられました」

 いずれしても、右肘靱帯の損傷という復帰までに相当な時間を要する故障だったことは、非常に残念な結果ではあるが、前田は前述の15日の会見で前向きな気持ちでリハビリを行うことを示しているので、これから順調に回復することを願いたい。そして、来年か、あるいは再来年になるかはまだわからないが、前田が“本来の姿“でマウンドに戻ってくる日を楽しみに待ち望みたい。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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