そんな葛西選手の活躍によって、日本人の大好物ワードと化した「レジェンド」は、その後もイチロー選手(現在は引退)や三浦知良選手、内村航平選手といった「伝説級現役選手」の代名詞として使われるようになりました。確かに使い勝手が良い上に、英語ならではのお洒落感のある言葉です。私もここ数年、この連載において幾度となく使った記憶がありますし、テレビでも口にする頻度が一気に増えました。しかし、大谷選手やダルビッシュ選手のことをレジェンド扱いするような馬鹿な真似はしませんし、それで仕事した気になっているような怠慢さもないと自負している次第です。

 ちなみに、現在の日本における「生けるレジェンド」は誰なのか。芸能界だと黒柳徹子さんや美輪明宏さんなどが思い浮かびます。アイドルならば、ぶっちぎりで松田聖子さんでしょう。グループ解散を経て今なお現役ジャニーズという点では木村拓哉さんも「レジェンド」に値するのかもしれません。個人的には、27年目の今も結成当時のメンバー(途中脱退→復帰あり)で活動しているMAXにも、「沖縄アイドル界のレジェンド」の称号を付与させて頂きたい。

「アイドル」も「カリスマ」も「レジェンド」も、なろうと思ってなれるようなものではなく、それは世間や時代が作り出す「現象」です。だからこそ、その選定にはセンスと責任が問われます。世間のセンス次第では、徳光和夫(80歳)だって「レジェンド」になってしまうのです。国会議事堂なんてレジェンドの巣窟ですよ。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2021年10月8日号

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