野球以外の部分でも注目を集めた。ハンカチで汗をぬぐう姿とさわやかな容姿から「ハンカチ王子」という呼び名が付き、マスコミが殺到した。

「当時はやはり、野球以外でフォーカスされるのは本意ではありませんでした」

 いまでは、それもいい思い出だという。

「大学・プロへと進む際にあれだけ注目されるのは想定外でした。僕は甲子園で人生が変わった人間です。あの夏があったから、今も野球ができている。期待してもらいながら思うように結果を残せていない悔しさが、いまの僕を突き動かしています」

 このままでは終われない、と本人が振り返るように、プロでの成績は決して華々しいものではない。高校卒業後、早稲田大学を経て2011年、北海道日本ハムファイターズに入団。ドラフトでは4球団が競合する鳴り物入りでのデビューだったが、これまで(18年7月19日現在)、1軍通算15勝にとどまる。先日は、週刊誌で「キャスター転身か?」と報じられた。

「確かに、いま苦しんでいます」と率直に語る斎藤投手。しかし、引退は考えていないという。

「思うように活躍できないのは苦しいですが、いまも野球ができる喜びを感じています。甲子園での思い出もずっと心の中にある。当時の経験も、いま、もがいていることも、これからの野球人生にプラスだと思っています。まずは1年でも長く現役を続けること。そこから2ケタ勝利とかチームの優勝という目標も言えるようになると思う」

 斎藤投手が人生の分岐点だと話す甲子園では、100回目の大会が始まる。

「思い出はずっと続くし、人生の大きな糧になる。野球でつながった縁を感じながら、全力でプレーしてほしいですね」

 僕もがんばります。そう言って、斎藤投手は笑顔を見せた。

(編集部 川口穣)

※AERA 2018年8月6日号

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