なかでも今年公開された「ヤクザと家族 The Family」は、「俳優人生の中で一つの転機になった」作品だ。
「キャラクターとしてどれだけ自然体でその世界に存在できるか、藤井道人監督から体の使い方、意識の変え方を教えていただいた。芝居について考えるきっかけを作っていただきました。そこから作品や役に対しての向き合い方や、現場の立ち方も変わったと思っています」
もっとも、“旅”はいつも順風満帆とは限らない。実際、つらくない現場はないし、「出演作全部が楽しいというのは嘘だと思う(笑)」ときっぱり。
「でも、苦しい時やダメだったと思う時もないと、次の励みになりません。それを経験することで自分の引き出しがもっと増える。プラスマイナスの感情を常日頃から感じていないと、俳優としてもったいないと思うんです」
新しい景色との出合いよりも、新しい視点の発見──。それこそが彼自身にとって“旅”の醍醐味なのかもしれない。(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2021年10月11日号