◆新たな抗体薬も経口治療薬も

抗体カクテル療法で使う薬。イムデビマブ(左)とカシリビマブ (c)朝日新聞社
抗体カクテル療法で使う薬。イムデビマブ(左)とカシリビマブ (c)朝日新聞社

「海外の試験では、重症化リスクが7割下がったというデータがあります。2種類の抗体(カシリビマブとイムデビマブ)をカクテルするわけですから、ウイルスを捕らえる割合も高まる。抗体薬の研究を30年やっていますが、混ぜるというのは初めて聞いた。トランプ前大統領がコロナに感染したときに使用したのがこの薬ですから、その段階ですでに効果があり、安全性も高いことがわかっていたはずです」

 加藤教授によると、欧米では濃厚接触した場合など、予防的に投与されることが多いという。

「ウイルスが体内で増殖を始める前の早期に投与すれば中等症以上にはなりません。同じ抗体薬のソトロビマブも承認されたことで、抗体薬の手持ちが増えることになったのも好材料。ただし、開発費が相当かかっているはずなので、抗体薬の価格は公開されていませんが、高価であることは間違いない。国にお金の余裕があり、開業医の冷蔵庫に保管されるほど普及すれば、来年にはコロナもインフルエンザレベルに収束するはずです」(加藤教授)

 片輪走行よりは両輪走行のほうが安定するが、二輪車より三輪車のほうがさらに安定するのは明らか。その可能性も出てきた。9月29日に塩野義製薬が「新型コロナ治療薬となる抗ウイルス薬の、今年度中の供給を目指す」と発表した。会見した手代木功社長は「これは自宅で使える飲み薬で、新型コロナ治療の最後の1ピースになる」と自信をのぞかせた。

 その直後の10月1日にも大きなニュースが飛び込んできた。米製薬大手メルクが、開発中の新型コロナ向けの飲み薬が、死亡と重症化の危険性をほぼ半減させるとの臨床試験(治験)結果を発表。日本も含め、各国で使用許可を申請する予定という。承認されれば、新型コロナで初の経口治療薬になる。ほかにも、米ファイザーやスイスの製薬大手ロシュと子会社の中外製薬などでも開発が進んでいる。

治験中の飲み薬「モルヌピラビル」(米メルク社提供) (c)朝日新聞社
治験中の飲み薬「モルヌピラビル」(米メルク社提供) (c)朝日新聞社

 国産ワクチンも治験段階に入っており、しばらくすれば安定供給も可能になりそうだ。

 コロナ対策のピースが出そろうまであと少し。その期間を「つかの間の解放感」で終わらせないためには、あとひと息の用心が必要だ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年10月15日号

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