緊急事態宣言明けの初日となる10月1日夜、都内の飲み屋街には、多くの人たちが久しぶりの「ちょっと一杯」を楽しむ姿があった。まだ安心はできないが、一方で治療薬の開発も大きく進展した。新型コロナが「ただの風邪」になる日も遠くない?
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午後6時過ぎ。銀座(東京都中央区)のビア・バーに、3人組の若者がやってきた。「いらっしゃいませ~!」。店員の元気な声が出迎える。宣言期間中は休業していたこの店にとって、2カ月以上ぶりの予約客だった。この日に備え、数日前からランチ営業だけを再開し、新たにバイトのスタッフを雇い、「酒提供ナシ」で慣らし運転を始めていたという。
さっそくビールを注ぐバーテンダーは、「こうしてお客様にビールを注ぐのも久しぶり。開店できるのを待ちに待っていました」とうれしそうに話す。この日の予約は3組。コロナ前の金曜日と比べたらほんのわずかだが、広い店内も少しずつ埋まり始めていた。
午後6時半過ぎに来店した4人は会社の同僚。9月1日に配属された新メンバーのための1カ月遅れの歓迎会だという。ビールが届くとマスクをしたまま「カンパーイ!」。おもむろにマスクを外し、グイッとあおった。
「僕らも久しぶりの飲み会です。宣言明け初日だから、もしかしたら満員かと思ってたけど、入れてよかった。やっぱり店で飲むビールは圧倒的においしいです」
とはいえ、この日は台風の影響もあってか、周辺の人影はまばら。営業を再開させたが、客は数組という店も多かった。店の前で客待ちをしていた洋風居酒屋の店員は「出足、悪いです。宣言期間中も酒を出していた店にお客さんが流れてしまった可能性もあるけど、今日は台風のせいだと思いたい」と期待外れの客足に不安そうだった。
“おじさんの聖地”新橋の飲み屋街にはこの日だけのサービスをアピールする立て看板がいくつも掲げられていた。「1杯目1円」「全日ハッピーアワー実施中、生ビール、酎ハイ、ハイボール半額」等々。軽トラックで酒を配達していた酒店店員は「今週に入ってから大忙し。手が足りないくらいだよ。うれしいね~。やっぱり新橋はこうでなくっちゃ」と言い、台車に酒を積んでビルに消えていった。