チェーン展開する居酒屋では台風にもかかわらず満席に近い混雑ぶり。コロナ前と違うのは、テーブルにアクリル板のパーティションがあるくらい。午後5時から飲み始めたという中年男性2人はすでにできあがり気味。
「待ちきれなくてさ(笑)。外回りして会社に戻らず、勢いで飲みに来ちゃった」「“今日は直帰します”って電話して。これもリモートってか(笑)」とご機嫌だ。2人ともワクチン接種済みだという。
まもなく午後8時が近い。東京都のリバウンド防止措置では、「認証を受けた店」で酒類の提供は午後8時までとなっている。しかし、路地裏の、ある焼き鳥店では、認証を受けていないが、カウンターの2組の客が焼き鳥片手にグラスを傾けていた。
「ルールは知っていますよ。でもほかの店がみんなお酒を始めたのに、ウチだけ酒を出さないわけにはいかないでしょ」と店主。閉店予定時間の午後9時までは酒を提供するつもりだと話した。
酒提供終了の時間直前に冒頭のビア・バーを再訪するとほぼ満席だった。テーブルにはまだ酒が残っているのに、最後の一杯を追加注文する客が数組あった。バーテンダーは「台風を割り引いたら上々です。このまま12月いっぱいまでコロナが再拡大しないとありがたい」としみじみと話した。
このように銀座、新橋では久々に笑い声が響いたが、これではまた感染が拡大してしまうという懸念の声も少なくない。「この状態がずっと続くかは疑問。また緊急事態宣言にならないようにしたいけど、店としては酒が提供できる今のうちに稼ぎたいというのも事実」と新橋の焼き鳥店店主は本音を漏らす。
県境を越えた移動の制限が続く中、苦しい経営を続けていた観光業にも明るい笑顔が戻ってきた。緊急事態宣言中には都内を巡る2コースだけで運営していた「はとバス」は、宣言明けの10月からは約3カ月ぶりに東京以外を巡るツアー21コースを復活させた。9月末から問い合わせも増え始め、特に人気は10月後半からのツアー。日光(栃木県)の紅葉やぶどう狩りなどで次々と予約が埋まり始めており、「宣言が解除されて旅行に行ってもいいというマインドが高まってくるはず。期待感をもって対応していく」(広報)という。