塩野義製薬の創薬研究(同社提供) (c)朝日新聞社
塩野義製薬の創薬研究(同社提供) (c)朝日新聞社

◆人気のツアーは10月後半の京都

 ワクチン接種済みの人を対象にしたツアーを売り出した「読売旅行」には、9月の5倍以上の問い合わせがあり、10月後半の京都の紅葉を楽しむツアーなどでは次々と定員が埋まっているという。このツアーはワクチンを2回接種後14日以上経過、もしくは3日以内の検査で陰性だった人限定。旅行当日にワクチン接種シールが2枚貼ってある台紙、もしくは陰性証明を持参する必要がある。

 ワクチン接種割引を実施しているのがHIS。ワクチンを2回接種した人は旅行代金が3千円割引されるツアーで、「安全に旅行を楽しんでもらうため」(広報)だ。沖縄旅行が人気で、宣言解除が決まってから予約数が倍近くに伸びたという。

 不況が続いた航空業界にも追い風となっている。ANAホールディングスによると、10月分の国内線搭乗予約は9月上旬で1日5千人程度だったが、緊急事態宣言解除が決まった翌日の9月29日には5万人に上った。実に10倍増だ。日本航空でも国内線の予約数は大幅に伸びている。

 とはいえ、再び感染が拡大し、第6波に襲われれば、せっかくの予約もキャンセルとなってしまう。観光業者も飲食店もそれを何より恐れている。

 菅義偉前首相が宣言解除を発表した9月28日の会見に同席した政府分科会の尾身茂会長は、「(解除は)みんなガードを下げていいというメッセージではない」として「12月になると、いわゆる恒例行事があり感染拡大のリスクはある。仮にリバウンドの兆候が見えて、医療に逼迫(ひっぱく)の予兆が探知できたら、すばやく果敢に緊急事態宣言の発出をやっていただきたい」と、注意を促している。国民全員が浮かれムードになれば、この解放感は“つかの間のもの”になってしまうからだ。

 多くの専門家が第6波の到来を懸念する中、次に感染拡大があっても第5波のような事態にはならないのではないかという見方も出始めている。

 一つはワクチン接種の拡大だ。11月までの早い段階で、接種を希望するすべての人への接種が終わると見込まれている。当初は接種を敬遠していた若者層にもワクチン接種が広がっているのは好材料だ。

 ただ、ワクチン接種で先行した欧米諸国では現在、接種後に感染する「ブレークスルー感染」も増えている。こうしたワクチン頼みの“片輪走行”を補うのが抗体薬だ。「抗体薬は人類を救う」と言う抗体薬研究者、東北大大学院医学系研究科の加藤幸成教授は「抗体カクテル療法は間違いなく特効薬になる」と断言する。

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