ア・リーグ本塁打王争い(AERA 2021年10月18日号より)
ア・リーグ本塁打王争い(AERA 2021年10月18日号より)

 異次元の成績を残しても大谷に満足感はないかもしれない。私たちの感覚もまひしている。自己最多の46本塁打に到達したことより、あと一歩で日本人初の本塁打王を逃したことが話題になるのが最たる例だろう。昨年は打率1割9分、7本塁打、24打点だったことを考えると、見違えるような変身だ。これには理由がある。19年9月に左膝蓋骨(しつがいこつ)の手術を受けた影響で、昨年は下半身が万全でなく軸足の左足でタメを作れなかった。直球に差し込まれたり変化球に泳がされたりして打てる球が限られていた。だが、今年は軸足に体重をきっちり乗せて速い球に対応し、緩急にも崩されない。体調が万全であれば、数字を残せることを証明した。 

 前半戦84試合で33本塁打。一時は大リーグで01年以来のシーズン60本塁打も視野に入ったが、後半戦は71試合で13本塁打とペースがガクッと落ちた。MVPを3度受賞し、大リーグ最強打者と形容されるマイク・トラウト(30)、19年の打点王アンソニー・レンドン(31)が故障で戦線離脱したのは大きな痛手だった。大谷は勝負を避けられることが増え、申告敬遠20はリーグ最多。96四球もリーグ3位だった。 

大谷翔平の大リーグでの成績(AERA 2021年10月18日号より)
大谷翔平の大リーグでの成績(AERA 2021年10月18日号より)

■来年は60本塁打も可能 

 ただ、「本塁打のペースが落ちた理由は大谷自身にもある」と米国駐在の日本人記者は言う。 

「後半戦になると、打球が上がらなくなった。甘い球も一、二塁間に引っかけた打球になることが増えた。投手で最後まであれだけのパフォーマンスを見せていたので疲労が原因とは思えない。体の開きが若干早くなるなど、打撃のメカニズムに狂いが生じていたようにも感じた。後半戦に入って相手バッテリーの警戒が高まり、1試合で打てる球が1、2球になったことで少し強引になったのかもしれない。ただ、本人は修正点を理解しているだろう。彼のすごさは46本塁打が目いっぱいに感じないこと。まだまだ伸びしろがあり、来年は60本塁打を打っても不思議ではない。完成形の姿が想像できない」 

(ライター・牧忠則)

AERA 2021年10月18日号より抜粋

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