エンゼルス・大谷翔平の今季の活躍は、日米のファンに鮮烈な記憶を残した。本塁打王は逃したものの、投打の「二刀流」でMVP最有力候補に変わりはない。AERA 2021年10月18日号の記事を紹介する。
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ベンチで笑顔がはじける。大リーグ・エンゼルスの大谷翔平(27)は最後まで「野球を楽しむ」自分のスタイルを貫き、162試合を駆け抜けた。レギュラーシーズン最終戦となった10月3日のマリナーズ戦に「1番・指名打者」でスタメン出場し、初回に先頭打者本塁打の46号右越えソロ。ブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ(22)、ロイヤルズのサルバドール・ペレス(31)と2本差で惜しくもア・リーグ本塁打王には届かなかったが、日本勢では2007年の松井秀喜(ヤンキース)以来の100打点を挙げた。
「タイトルを取れたらもちろんすごいけど、大谷のすごさは数字だけの物差しでは測れない。160キロの球を投げて、打席では本塁打を連発し、塁に出たら盗塁を決める。こんなスーパースターは今まで見たことがない。大リーグに革命を起こしたと言ってもおおげさではない」(ロサンゼルスの地元紙記者)
投打5部門(投球回、奪三振、安打、得点、打点)で100を記録する「クインティプル100」を史上初めて達成した。打撃面では155試合出場で打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、26盗塁で、出塁率と長打率を足した指標「OPS」はリーグ2位の0.965。大リーグ史上6人目の「45本塁打&25盗塁」に到達し、8三塁打はリーグ1位だった。
投手としては23試合登板で130回3分の1を投げ、9勝2敗、防御率3.18、156奪三振。投球回、勝利、奪三振はいずれもチーム最多で、誰もが認めるチームのエースだった。1918年のベーブ・ルース以来となる同一シーズンの「2桁勝利、2桁本塁打」は逃したものの、打線の援護に恵まれない登板も少なくなかった。ポストシーズンに進出したチームで投げていれば、12、13勝はしていただろう。
■昨年から見違える変身
例年11月に発表されるシーズン最優秀選手(MVP)は記者投票で選出される。大リーグ公式サイトが9月20日に専門家による最新の投票結果を発表し、ア・リーグでは大谷が56人の1位票を得てトップだった。投票は1~3位を選ぶ形式で、大谷は約1カ月前の調査で90%の1位票を獲得し、今回は78.9%。本塁打王を逃したことも影響して1位票の割合は少し落ちたが、01年のイチロー(マリナーズ)以来、日本人選手2人目のMVP受賞はほぼ間違いないというのが米国メディアの見方だ。