ミソジニー=女性嫌悪の激しい社会は、女性に二つの役割を与える。
母のように全て許し受け入れる女と、男を性的に刺激する女。
そして母であるべき女が性的な振る舞いをしたときは、徹底的にたたく。性的に刺激する女が「被害を訴えた時」は全力でたたく。今回の眞子内親王の結婚をめぐる「騒ぎ」をみていると、この国のミソジニーがクッキリと輪郭をもって浮かび上がるのが分かる。佳代さんのたたかれ方を見ていると、男を利用するように見える女が許せない、女のくせに、母のくせに、という怒りが聞こえてくる。そしてまた皇室の女性は事実上、男性と結婚しなければ家を出られない、外から来る女性には男児を産むことが求められる性差別的制度であることが明確に浮かび上がった。どちらにしても、ミソジニー社会は、女性たちの本音など、女性たちの欲望など、求めていないのだ。
この男性ジャーナリストの告発に、「よくやった」というコメントがSNS上には数多くある。検察に捜査される可能性のある女を母親に持つ息子が内親王の夫になるのは許せない、という声のようだが、そもそもその声が含む強烈な女性嫌悪こそ、告発されるべきものなのではないか。佳代さんへの攻撃は、明らかに一線を越えた。この国に生きる女性が例外なく危険水域におかれているように感じる。
■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表