作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、眞子さまのお相手の小室圭さんの母親、佳代さんをめぐる世間の反応について。
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小室佳代さんは、何か罪を犯したのだろうか。
眞子内親王の強い意思があるにもかかわらず、「国民への説明責任」を訴える声は相変わらずやまない。先日はジャーナリストだという男性が佳代さんを検察に告発したというニュースが流れた。遺族年金と傷病手当金を不正に受給したという詐欺罪にあたるというのである。
そもそも内親王の結婚が「問題」となったのは、佳代さんの元婚約者の男性が、佳代さんとの間に金銭トラブルがあることをマスコミに訴えたことから始まっている。週刊誌の報道などによれば、佳代さんの夫が死亡した後、男性は佳代さんと婚約する。もともと同じマンションに暮らしており、亡くなった夫とも親しかった。男性は圭さんの父親代わりとして、佳代さんに頼まれれば生活費を渡し、学費や留学に関わる費用も支払った。婚約期間2年の間に、男性が佳代さんに渡した金額は400万円強。経済的な負担を強く感じた男性は佳代さんに婚約破棄を申し出て、さらに400万円の返済を求めた。佳代さんはこれを「借金のつもりはない」と拒否したというのが「トラブル」の内容だ。
このことをもって内親王の婚約は暗礁に乗り上げることになった。そして佳代さんに対する過剰なマスコミの取材、度を越したバッシングが今に至るまで続いている。まるで、“金をたかるような人物”が皇室に近づこうとしたこと自体が大それた罪であるでもいうように、佳代さんは「嘲笑してもいい人」「たたき続けていい人」とされ、勤め先とのトラブルなども事細かく報じられ続けている。いったい、佳代さんが犯した罪とは何なのだろう。この国で人前で歩くのも困難なほどに人生をさらされるような罪を、彼女は犯したとでもいうのだろうか。
私は以前、男性3人の殺害の容疑で逮捕された女性の事件を追ったことがある。100日間にわたる裁判員裁判で彼女が世間を大きくにぎわしたのは、彼女がインターネットで知り合った男性たちからわずかな期間に1億円以上のお金を受け取っていたことだった。マッチングサイトで料理やピアノ好きをアピールし、“女性らしい”従順さと結婚への憧れを語る女性に、指示されるまま数十万円を振り込んだ男性は一人や二人じゃなかった。返金を要求する男性もいたが、彼女は決してATMの前でナイフを突きつけたわけでもない。「あなたは私にいくら出せますか? 今日中に40万必要なんです。将来を真剣に考えてますか?」とショートメールで迫られ、男性たちは暗示にかかったように送金してしまっていた。