お小遣いの100円玉を握りしめ、10円から40円くらいの(当時は5円のものもありました)並んだお菓子を目の前に、あれにしようか、それともこれを買おうかと真剣に悩みました。
そして何度も何度も「合計100円になるベストな選択」の計算をしたものです。
10円のガムを三つ、20円のお菓子を一つ、30円のお菓子を二つ選ぶと、100円を超えてしまいます。
そこで、一番はずせないお菓子を決めて、その後、20円のものをやめるか、30円のものを一つにするか……そんなことを、繰り返し考えました。
欲しいものを選ぶという過程はとても楽しく、そんな中で「真剣に足したり引いたりする」というシチュエーションは、きっと脳を存分に刺激してくれたことでしょう。
そして、当時は意識していたわけではありませんが、この行為により、算数を現実の中に落とし込んでいたわけです。
■実際の買い物経験が「生きた勉強」になる
以前、何かの記事で、「日本の数学は、2+3がいくつになるかを計算させるだけで、答えはたった一つという教え方をするから頭が固くなる」「ある国の数学では、5にするには何と何を足すかを考えさせるため、思考力が伸びる」という内容のものを読んだことがあります。
たしかに一理ある記事ですか、私は、「5にするには何と何を足すかを考える」よりも、「実際のお店で、合計で100円にするには何円の物を何個買えるかを考える」という買い物の経験のほうが、もっとためになる、数学を身近に感じられる「生きた勉強法」だなと思いました。
時代を考えると当然かもしれませんが、残念なことに最近ではあまり駄菓子屋さんを見かけなくなってしまいました。子どもたちがそうした「生きた勉強」をする機会をなかなか得られにくくなったなと感じています。
先日、デパートで懐かしの駄菓子を売るイベントが催されていたのですが、いざのぞいてみると、当時の売り方とはだいぶ異なっていてガッカリしました。
過去に10円だったお菓子が袋詰めにされ1セットで100円になっていたり、50円だったものが100円に値上がりしていたり。
味は昔と同じかもしれませんが、100円玉一つでは、選べるのは1種類だけか、せいぜい2種類を買うのがやっとです。
今の子どもたちの買い物は、「数十円の安いお菓子を何種類か組み合わせる」ではなく、「どれか一つ100円程度の欲しいものを選ぶ」という選択の仕方が主流になっているように思います。