では、冒頭の男性の妻が受けたアレルギー検査の「遅延型」とは一体なにか?
「“遅延型”という食物アレルギーはありません」
小児アレルギー領域を専門とする国立病院機構相模原病院臨床研究センターの佐藤さくら医師は、こう否定する。
通常、食物アレルギーは、即時型も非即時型も採血でIgE抗体の値を測定する特異的IgE抗体検査(以下、IgE抗体検査)で調べる。
だが、「遅延型食物アレルギー検査」はIgG抗体の値を調べる。前者は健康保険適用だが、IgG抗体は非適用の自由診療で、200項目近い内容で5万円前後の価格設定が多い。
IgG抗体は、食べ物の摂取量に比例しているので、よく食べる食品は数値が高くなる。つまり、食物アレルギーのない人にも存在し、全く症状がなくても高確率で陽性になってしまう。
「IgG抗体検査で原因食品は診断できず、この結果で食べ物を除去すると食物アレルギーの原因ではない食べ物まで除去することとなり、健康被害を招く恐れがあります」(佐藤医師)
グルテンに異常な免疫反応が生じるセリアック病や、IgE抗体検査や食物経口負荷試験で確認された小麦アレルギーなど、グルテンフリーが必要な人もいる。だが、例えば、セリアック病は北欧系に見られる遺伝性の病気だ。日本の患者数は諸説あるものの、人口の0.05%程度に過ぎない。
■IgE抗体検査が指標
昭和大学医学部教授の今井孝成医師もこう指摘する。
「IgG抗体検査の結果や自己判断でグルテンフリーを行うのは、成人が嗜好でやるならかまいませんが、広めるのは賛成しかねます。成長期の子どもにやらせるのはもってのほかです」
ネットで遅延型食物アレルギーを検索すると、この検査を行う医療機関が多数ヒットする。「食べて数時間~数日経ってから症状が表れる」「気づきにくい」「さまざまな不調の原因」といった説明が並ぶ。子どもの発達障害や不妊に関わるかもしれないという医療機関まである。