軽症は「少し気持ちが悪い」「だるい」程度で見過ごしてしまいがちだが、ひどい場合は、呼吸困難や嘔吐、血圧低下、意識障害などが出て救急搬送され、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが判明する。

「食物依存性運動誘発アナフィラキシーであれば、原因食物を食べた後2時間は安静にして運動をしない。症状が出たら、抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイド薬を服用する。ただ、これらはアナフィラキシーに効果はないため、アドレナリンの自己注射製剤エピペンの処方を受け、万一に備えて薬を携帯することを勧めます」(佐藤医師)

(AERA 2021年10月18日号より)
(AERA 2021年10月18日号より)

■似た構造のタンパク質

 残念ながら、成人の食物アレルギーに関しては、人口比率でどれくらいの人が発症しているかなどのデータがない。だが、前出の松山医師は、「成人の食物アレルギーでは、『食物依存性運動誘発アナフィラキシー』と『花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)』が問題」と話す。

 PFASとは、花粉症を持っている患者が、野菜や果物を生で食べた時に唇、口、喉などにイガイガ感や痒み、腫れなどを起こすもの。スギ花粉症はトマト、ブタクサ花粉症はメロン、スイカ、キュウリ、ズッキーニ、バナナなどに反応しやすい。

 花粉と食物といった異なる物質で、それぞれのアレルギー反応を引き起こすタンパク質の構造が似ていると、原因物質以外でもアレルギー症状が誘発される。これを「交差反応」という。

 PFASが疑われる場合、どう対策するのがいいのか?

 松山医師はリンゴやメロンでのアレルギー症状を訴える人には、まず「花粉症はあるか」を確認し、次いで「加熱したら食べられるか」を聞くという。すると「生はダメ。でも、アップルパイやジャムは問題ない」というケースがある。

「食物アレルギーなら、形を変えても症状が出ます。けれど、加熱したパイやジャムが大丈夫であれば、大体がPFASです。フレッシュなものが食べたければ、電子レンジで少し加熱するなどして試してはどうか」(松山医師)

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