※写真はイメージです(GettyImages)
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 食物アレルギーといえば、子どもの頃の発症をイメージしがちだが、大人になってから思わぬ食物アレルギーに悩まされる人もいる。大人の場合は、何に気を付ければいいのか、どんな治療法があるのか、専門家に聞いた。AERA 2021年10月18日号は、「アレルギーの新常識」特集。

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 この20年で、小児の食物アレルギーの対策は大きな進歩を遂げたという。

 一方、成人の食物アレルギーに関しては、「小児の20年前の状況」のままだ。

「関心を持っている医師が少ないので症例が集まらず、研究が進まない。対策は本人任せ」(昭和大学医学部の今井孝成医師)だからだという。

 成人の食物アレルギー患者の診察も行うユーカリが丘アレルギーこどもクリニック院長の松山剛医師も、問題点を指摘する。

「成人の食物アレルギーを診る内科がない。成人で食物アレルギーを発症した患者さんは、アプローチ先がかなり限定されてしまうのです」

 つまり、成人の食物アレルギーの場合、ある程度、自分で自分の身を守る術を知っておいた方がいい。複数の臓器や全身に症状が表れ、命の危険が生じ得るアナフィラキシーを起こす可能性があるので、なおさらだ。

 だが、成人になってから、予想外のアレルギーに悩まされることになった人もいる。

■運動前に飲んだら

 東京都在住の52歳男性は3年前、スポーツジムに入会した。普段の食事だけでは筋肉量が増えなかったので、牛乳由来のホエイプロテインを牛乳で溶いてトレーニング前に飲み始めた。すると、必ずと言っていいほど蕁麻疹が出るようになった。飲むのをやめると、出なくなる。

「牛乳やプロテインに含まれる成分でアレルギーを起こしているかは検査をしないとわかりませんが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性はあります」(国立病院機構相模原病院臨床研究センターの佐藤さくら医師)

 食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、特定の原因物質を食べた後に運動をすると出るアレルギー反応。運動によりアレルゲンの吸収が高まるためではないかと考えられている。激しい運動が引き金になることが多いが、散歩や階段を駆け上った程度でも起こることがある。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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