(週刊朝日2021年10月22日号より)
(週刊朝日2021年10月22日号より)

 医療保険以上に、介護保険に頼る割合が高い人のケースを見てみよう。<表3>は、認知症の82歳女性、要介護4、医療保険1割負担でひと月当たりにかかった費用だ。認知症が進行し、一人で通院できなくなったことから、在宅療養に切り替えた。一人暮らしであったため、医師からグループホームへの入所を勧められたが、「絶対に家から出たくない」と頑なに拒否。幸い近所との関係が良好で、周囲に気にかけてくれる人が複数いたこともあり、近くに住む姪も定期的に通う形で在宅療養を始めた。

 そのうち症状はさらに進行し、ほとんど寝たきりの状態に。特に症状が心配な間は、24時間巡回型のヘルパーをお願いした。女性が息を引き取ったのを確認したのは、深夜に訪れたヘルパーだったという。

 女性は要介護4で、生活全般のことをヘルパーに頼ることが多く、ヘルパー料金が高額になっていたが、介護保険が1割負担であったため、医療・介護を合わせたひと月の自己負担額は3万円台に収まっていた。

「在宅療養や在宅介護の費用をうまく抑えて効率化するには、社会保障をいかに上手に利用するかがポイントになります」

 こう話すのは、介護サービスや老後資金のノウハウに詳しいファイナンシャルプランナーの柳澤美由紀さん。柳澤さんは、介護費用を抑えるためのコツとして、「何が足りていないかを明確にすること」を強調する。例えば、家族が夜まで不在のため、その間のサービスを頼みたいなら、それが可能な事業者や施設を探す。そして該当する事業者や施設に属するケアマネジャーに介護プランを考えてもらうという手順だ。足りない部分を明確にしないままケアマネジャーを決めてしまうと、その人が所属している事業者のサービスを中心にプランを組まれることがあり、本当に必要なサービスを受けられないこともある。

「何が足りないのかを明確にするためには、まず一日の流れを時間軸で書き出してみて、どの時間帯にどんなサポートが必要なのかを可視化すること。足りていない部分がどこなのかを明確にすると、余計なサービスを頼まなくてよいし、具体的な相談がしやすい」(柳澤さん)

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