具体的にかかる費用は、利用している医療機関や住んでいる地域、症状によっても異なるが、例えば70歳以上の高齢者で、医療保険の自己負担が1割の場合、月2回の24時間対応の訪問診療でも、月に約6500円程度。病状により往診回数や採血検査料、在宅酸素などの使用料がそれに加わるが、高額療養費制度によって、自己負担額が月に1万8千円を超えることはない。神奈川県で在宅医療を推進し、これまで千人を超える患者の最期を看取ってきた千場純医師(三輪医院院長)は言う。

「実際は医療費に加えて介護保険の負担分がありますが、要介護3~5の区分での介護費用とあわせても月額は4万~5万円にとどまる場合が多い」

(週刊朝日2021年10月22日号より)

 一般的に、亡くなる前の数カ月は、往診の回数も増えることから医療費が高くなりやすい。<表2>は、下咽頭がん末期で要介護2、余命3カ月の76歳男性(医療保険1割負担)のひと月当たりの医療・介護にかかった金額だ。A子さんの母の余命1カ月の場合の金額と比べると、症状は違うものの、末期がんの進行具合によって、サービスや金額が変わってくることがわかる。

「看取りの場合、最後の数カ月の総額は30万円程度が目安ですが、これも高額療養費制度の対象になります。在宅療養というと高額なイメージを持たれる方が多いのですが、通常は病院で看取るより費用がかからないのです」

 ここで入院した場合の費用を見てみよう。70歳以上の高齢者で医療費1割負担の人が入院した場合、高額療養費制度によって、医療費上限額は5万7600円と決められている。だが同制度は差額ベッド代や食費、オムツ代や入院着レンタル代などの備品代は適用外となり、これが結構な費用になる。冒頭のA子さんの母の場合も、こうした保険適用外の金額で、ひと月20万円強の費用がかかった。特に大きかったのが、差額ベッド代だ。

 差額ベッド代は、2人部屋や個室などを希望する場合、一般病棟との差額として発生する費用を指す。だが病院によっては3人部屋や4人部屋でも実費がかかる場合があり、無料の部屋が空いていない場合には差額ベッド代のかかる部屋に入院せざるを得ない。

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