乳房の測定データからつくり上げた「3Dプリントバスト」。患者の乳房に触れることなくさまざまな検討ができる可能性がある(ワコール提供)
乳房の測定データからつくり上げた「3Dプリントバスト」。患者の乳房に触れることなくさまざまな検討ができる可能性がある(ワコール提供)

■患者自身が手術のゴールを決める

「やっていることは、手術中にブラをつけるという、とても単純なことなんです。でも、そうすることによってブラから出ている部分とか、浮き上がっているところが視覚的にすごくよくわかる。ブラからあふれている組織を削って、形を整え、きれいにブラのラインが出る乳房をつくります」

 手術前、患者はバストの形状を立った状態で測定する。その際、測定用の薄いブラジャーをつけ、体の姿勢の変化によって胸の形があまり変わらないように工夫しているが、手術中も念を入れ、十分に安全を確保したうえで、患者の上体を起こし、立った状態に近づけて乳房の形を整えていく。

「これまでは医者が手術のゴールを決めていた。それに対して、患者さんが手術前にブラを選び、それがよくフィットする乳房を再建する。患者さん自身が手術のゴールを決めるかたちになるのです」

 サージカルブラジャーの製作費用はそれほど高くないので、ほかの病院でも導入しやすいのではないか、と矢野医師は言う。

「手術のゴールが非常にクリアなるので、今後は乳房再建をされている先生方に学界や論文を通じて発信していきたいと思います」

 これまでワコールは女性の美を通じた社会貢献を企業目標としてきた。

「今回、有明病院様より、弊社の培った知見と現在注力するデジタルサービスが、乳房再建の発展に寄与できる可能性についてお話をいただいた際は、強い使命感を感じました。1人でも多くの方に乳房再建を通じて元の日常を取り戻していただくことに、この共同研究が広く貢献できるよう、しっかり取り組んでいきたいです」(ワコール・下山廣執行役員 イノベーション戦略室長)

(AERA dot.編集部・米倉昭仁) 

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