9月に入ってからの相場低迷は、ごく一部の米国企業が業績予想を下方修正したこと、恒大集団問題に伴う中国株の急落などが影響したと榮さんは言う。

「遠い将来は中国が世界一の大国となるかもしれませんが、足元で習近平は『改革・開放』から『共同富裕(格差縮小)』政策へと舵(かじ)を切っています。少なくとも10年先までなら、米国株へ多めに投資するほうが、よい成績を期待できそうです」

 ただ、積み立て投資にもいつかは“出口”、つまり換金時期が訪れる。定年など、自分がゴールに定めたタイミングで相場が暴落すると途方に暮れかねない。そこで、過去20年間で最大のダメージとなったリーマン・ショック後の状況についても試算してもらった。

■低迷期も積み立て継続

 すると、米国同時多発テロ事件直後の01年9月28日からS&P500への積み立て投資を始めた場合、リーマン・ショック後の大底(09年2月末)で、投資元本に対するリターンはマイナス40%。リーマン・ショック前の高値である07年10月末の資産評価額──つまり“トントン”に戻ったのは、11年の1月末。

「同じスタート地点で資金を一括投入していた場合、07年10月末の水準まで回復したのは13年5月。積み立てのメリットは、相場の下落局面で安く多くの口数を購入できる『ドルコスト平均法』の効果が得られること。積み立てを続けたことが奏功したと言えます」

 こう説明するのは、三菱UFJ国際投信の野尻広明さん。過去の結果では積み立てのほうが早くリカバリーできていたし、低迷期こそ積み立てをやめないことが大切なのである。

「定年時点ですべてを解約する必要はないでしょう。将来のキャッシュフローに合わせて現金化すればいいと思います。人生100年時代ですから、60歳以降も運用に充てられる時間は長い。現在の制度下では、つみたてNISAの非課税期間が終わったあとも、面倒な手続きなく特定口座で保有し続けられます」

(金融ジャーナリスト・大西洋平/編集部・中島晶子)

AERA 2021年10月25日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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