ここまでの話なら、米国株はすごい、積み立ては安泰だ!という結論で終わるが、ちょっと待った。9月に入り米国株市場に異変が生じている。何度となく大幅安を記録し、長期的な上昇トレンドに陰りが見えた。
中国不動産大手・恒大集団の経営危機が表面化し、同国市場も投資対象となっている「全世界株式(オール・カントリー)」の価格も低下。ツイッター上のウキウキした声も一変した。「米国株式の含み益バリアーが破られた」「投資なんて私には向いていなかった」という嘆き。相場下落とともに黙ってしまったアカウントも多い。
果たして、これは上昇相場の“終わりの始まり”を暗示しているのか? SBI証券投資情報部の榮(さかえ)聡さんに聞いた。
「米国株市場の変調は短期的な現象にすぎない。過去30年間におけるS&P500の平均騰落率は約8%です。分析結果によると、2022年は少なくとも同程度の上昇を期待できるでしょう。同指数に採用されている500社の来年度売上高は7%増が見込まれ、EPS(1株当たりの税引き後利益)も10%増と予想されているからです。過去と比較してもこれらの数値は平均的な伸びです」
なぜ米国の企業はここまで強いのか。根本的な理由は?
「新卒メインに一括採用して終身雇用を守る日本企業とは違い、米国企業の人事は臨機応変に対応している点が大きいと私は思っています。米国は人員を部署単位で採用し、情勢に応じて迅速に雇用を調整するのです。コロナ禍ではこの違いが浮き彫りになりました。コロナショックは20年3月、米国の失業率が戦後最悪に拡大したのは1カ月後の4月。コロナ前の3.5%から14.8%になりました」
■雇用調整と合理化の国
参考までに、日本の失業率はコロナ前が2.4%、その後も少しずつ拡大はしたものの、ピークは20年10月の3.1%。悪化の度合いは1%未満だった。業績が悪くなったからといってすぐ解雇されるとしたら、働く側からすれば安心できないが、確かに米国の雇用調整が迅速であることはわかる。
わかりやすくいうと、直ちにクビを切り、合理化をすすめるのが米国企業。業績改善のピッチもおのずと速くなるわけだ。