コロナ禍でオンライン授業の大学生活では、友だちをつくろうとしても難しい。そうした中、学生の孤立を避けようと大学が動き出している。AERA 2021年10月25日号は、法政大学と早稲田大学の対策を取材した。
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法政大学の学生14人が10月4日の夕方、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」に集まった。
「これから読書会を始めます」
図書館事務部の森川愛子さんの進行で始まったのは、本でつながるオンライン読書コミュニティ「法政ブックLab(ラブ)」だ。大学からプレゼントされた課題本を読み、感想をチャットアプリ「Slack(スラック)」で共有し、10月下旬に再びオンラインで集う。読書習慣をつけてもらう目的に加え、コロナ禍で孤立しがちな学生がつながる機会を作ろうと、法政大学が今年度から始めた。同大生なら誰でも参加できる。
この日は顔合わせ。いくつかの読書法が紹介され、お堅い読書会かと思いきや、
「本は相性で合わない本があっても当然。最後まで読めなかったら作者のせいにしてOKです」
と森川さんは言う。さらに、
「対話で他者に自分の意見をぶつけて再考することが大事。たとえ1ページも読んでいなくても堂々と語って」
と呼びかけた。
■内面的な対話の場に
対話タイムでは、今回の課題本『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健著)を読みたいと思った理由について語り合った。
あるグループでは、男子学生が体育会の部活動の主将として人の嫌がることも指示せざるを得なかった経験から「活動を振り返るために読みたかった」と明かし、女子学生は高校時代に嫌われるのが怖くて人間関係に疲れたことを語った。
別のグループでは、それぞれ好きな本の話題になった。文学部1年の高橋梨咲さん(18)が「(進学で)上京する前に読んでいた本です」と『東京百景』(又吉直樹著)の印象に残った箇所を紹介すると、別の学生が「今、本棚から取ってきます」としばらく中座。自宅から参加できるオンラインならではのシーンだ。