若松勉といえば、身長168センチと野球選手としては小柄ながら、ヤクルトひと筋19年の現役生活で2度の首位打者(1972、77年)に輝き、通算打率.319(歴代3位)、2173安打(同22位)、220本塁打(同90位)を記録した“小さな大打者”として知られている。
【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!
また、ヤクルト監督としても、2001年に日本一を実現。現役時代の78年と併せて、選手、指揮官の両方で頂点を極めている。
そんな数々の栄光とは裏腹に、温厚で生真面目な性格から地味な印象も強いが、その一方で、「お主、できるな!」とマニアックなファンを唸らせるような珍記録も何度か達成している。
NPB史上2人しかいない2試合連続代打サヨナラ本塁打が飛び出したのが、2度目の首位打者を手にした77年だ。
6月5日の中日戦で、けん制タッチアウトになった際に右脇腹を痛めた若松は、5試合スタメンから遠ざかっていたが、同12日の広島戦、2対2の延長10回に渡辺進の代打として打席に立った。
まだ痛みが残り、試合前の打撃練習も5、6本打っただけ。「ひと振りしかできない」と1球勝負にかけた若松は、池谷公二郎の初球、スライダーが真ん中に甘く入ってくるところを見逃さず、右翼席に叩き込んだ。
さらにドラマは続く。翌13日の広島戦、6対6で迎えた9回1死一塁、再び代打に起用された若松は、前日の池谷同様、松原明夫の初球、スライダーが真ん中に入ってくるところを右翼席に2試合連続の代打サヨナラ弾。打った本人も「どうなっちゃってんの?自分でも怖いみたいだ」と目を丸くした。
67年にヤクルトの前身・サンケイの豊田泰光以来10年ぶりの珍記録に、スポーツ紙も「花笠音頭」にひっかけ、2日続けて「メデタメデタの若松サマ」の見出しが躍った。
若松は79年7月11日の中日戦も含めて通算3本の代打サヨナラ本塁打を記録しており、こちらも高井保弘(阪急)と並ぶ歴代最多記録だ。