韓国軍の航空戦力は圧倒的に優勢で、北朝鮮の近代的戦闘機はMiG29が18機、それも部品が乏しくめったに飛行できない状況だ。韓国空軍はF15K戦闘爆撃機が59機、F16戦闘機が222機、ステルス戦闘攻撃機F35が36機、さらにまだ使える軽戦闘機F5が174機もある。北朝鮮の航空戦力はゼロに近いから韓国空軍は防空の必要が少なく、全体が爆撃航空団化している。日本が数十発の「トマホーク」を購入しても北朝鮮に対する抑止力を抜本的に強化することにはなりえないだろう。

 まして仮に米中2大国が「台湾有事」で戦争になり日本も参戦すれば、日本が火薬弾頭の「トマホーク」や「12式誘導弾」を持っても微々たる戦力に過ぎず、まるで砲兵部隊の砲撃戦の中に拳銃を持って加わるような形になる。日本の輸出の27%は中国向けでそれが停止し、日本企業が投資する事業約1万2千件が「敵性資産」として凍結、接収されれば日本経済に致命的打撃となるし、在日米軍基地などに中国のミサイルが発射されることは避けがたい。台湾行政府の世論調査では台湾人の84.9%は独立でも統一でもない「現状維持」を望んでいるから、日本はそれを支持し、米中戦争の防止に努めるのが安全保障と国益に適(かな)うと考える。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2022年11月21日号