■地中貫通爆弾も効果薄

 北朝鮮の発射機がミサイルを立てている状況がもし分かっても、それが単に訓練をしているのか、発射するのか、実験発射なのか、韓国などに向けて撃つ気か、日本を狙っているのかを判断するのは困難だ。日本政府が慌てて潜水艦などに発射命令を出し「先制攻撃をして核戦争の引き金を引いた」と世界に非難されれば取り返しがつかない。

 飛来してくるミサイルを迎撃する「ミサイル防衛」は相手が同時に多数を発射してくれば突破されるし、不規則な軌道をとったり超高速ミサイルも出現したりして「万全な防衛」は不可能になりつつある。だから「基地攻撃」を叫ぶ声が出るのだが目標の位置や相手の意図が分からない。そのため岸田政権は攻撃を受けた後に反撃する能力を持ち、攻撃をためらわせる抑止力を得ようとする。だが敵ミサイルの詳細な位置が分からなければそれに反撃するのは困難で、相手の司令部や政府の指揮中枢に反撃をするしかないだろう。

 だが戦争に直面した場合、政府や軍の要人、幕僚は秘密の地下壕(ごう)などの司令部にこもって指揮をとるのが定石だ。米空軍は長さ6メートル、直径40センチ、重量2トンの電柱状の「地中貫通爆弾」を発注、土なら30メートル、コンクリートなら6メートルの深さの地下壕を爆破可能という。だがトンネルの入り口が分かっても地下でどう曲がっているかは分からないから効果は乏しい。もちろん「トマホーク」ではそれは使えない。

 潜水艦、水上艦が搭載する「トマホーク」の他、陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」(射程1千キロに延伸中)、戦闘機の爆弾、対地ミサイルも反撃に使えるが、目標の位置などの情報は米軍、韓国軍に頼るしかない。だが戦争の最中に米・韓国軍が敵のミサイルを発見すればただちに1分でも早く攻撃するはずで、日本に連絡して攻撃させ、手柄を譲る悠長なことはないだろう。

■戦争防止が国益に適う

 自衛隊が朝鮮半島で戦う際には韓国の了承が必要だが「日本軍が同朋(どうほう)を攻撃する」として反感を抱く韓国国民も出て団結を損なうのを恐れ「こちらで十分やれます」との回答になる可能性も考えられる。

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