変化を恐れる傾向は若い世代にもあると指摘するのは、筑波大学教授で社会学者の土井隆義さん(61)だ。

「同じく民間人と皇室結婚で、美智子さまのときは皇室の『変化』を期待した。もちろんそのときも伝統重視の反対派はいましたが、いまは若年層も変化に懐疑的。変化とは希望を感じるものではなく、不安を煽るもの。変化を望まない若年層の保守化とも根がつながっています」

 いまの30代以下世代の意識の特徴は、「分相応をわきまえる生き方」だと、土井さんは言う。

「彼らにとって、『分をわきまえていない』ように見える小室さんが、『自分たちの秩序感覚を乱す存在』に見えて、許せない。そんな面もあるのかもしれません」

■承認の重みがなくなる

 土井さんは「家族のあり方の変化」も背景として指摘する。明治維新後の日本では、日本全体が大きな家族であり、頂点にいる父が天皇家、臣民はその子ども、という「疑似家族」のイメージで国家が形作られてきた。

「実際の家族も、家父長的なものが強かった。しかし戦後、家父長制からいわゆる愛情家族(相互の愛情と合意によって結ばれた民主的な家族)へとだんだん変わっていき、家庭内での父親は権威を体現するものではなくなってきたんです」

 その結果、父親と子どもは権威と服従の関係ではなく、「相互に承認し合う関係」に近づいてきた。

「日本という家族の父親的なものだった天皇家と、国民との関係もまた、相互承認の関係に変わってきた。私たちが好ましい存在として認めるから天皇家なんだし、天皇家も国民のことを愛して認めるから日本という国が安定する、というような関係。その承認が、さまざまに批判される小室さんの登場で揺らぎ、安定感に楔を打ち込まれたような感覚があるのかもしれません」

 どういうことか。自分を承認してくれる天皇家には、昔のように絶対的な権威でなくとも、「ある程度は」絶対的なものでいてくれないと困るという思い。でないとその承認の「重み」がないため、安定しないのだ。

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