結婚とは、「家と家」。そんな意識を根強く持つ層はまだ多いと話すのは、精神科医の香山リカさん(61)だ。

「選択的夫婦別姓への強い反対もそうですが、『結婚は家と家とのつながり。皇室という自分の理想であるべき家の娘が理想とは言えない家に嫁ぐなど許せない』といった価値観を持つ保守層が、安倍政権の長期化とインターネットの普及でむしろ勢力を強めていること。これがまず、お二人の結婚に否定的な声の背景としてあると思います」

 もう一つは、多くの人が自分を抑えながら生きるコロナ禍で、「好きなことを選択する人」に対して、「私はこんなに我慢しているのに」という自分の葛藤をそのまま「許せない」とぶつけてしまっているのではないか、という点だ。

「その際によく使われるのが『税金』という言葉。血税でニューヨークで優雅な暮らしをしようとしているらしい。でもこっちがスポンサーなんだから好きには使わせない、とか。この『払っている側にモノを言う権利がある』というおかしなお客様意識は少し前から広まっていて、公務員バッシングとも地続きだと感じています」(香山さん)

■分をわきまえていない

 批判の背景として、小室さんが皇室を変化させてしまうのではという懸念がある。そう見るのは成城大学教授で『天皇家の財布』などの著書もある森暢平さん(57)だ。

「1970年代、女性週刊誌は現在ほど皇室を大きく扱ってはいなかった。これは、経済がうまく循環し豊かだったから、あえて皇室を参照する必要がなかったという側面がある。ところがいま経済が停滞し、日本の先行きは明るくはない。天変地異があると急に神仏を信じたくなるのと同じように、不安の時代には不変なものを信じたくなる。だから、皇室のなかに過剰に伝統を読み込もうとする傾向があると思います」

 加えていま日本では階級性がほとんどなくなり、社会は平準化された。だから小室さんのように「『平民』から急に成り上がろうとする者」が、皇室に不変性や権威・威厳を求めたい人たちにはどこか胡散臭く見えてしまう、そう森さんは見る。

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