筆者は、”ピッチング・ニンジャ”の愛称で知られ、ダルビッシュ有や千賀滉大などプロの投手からも慕われている、有名な投手分析家のロブ・フリードマン氏に取材を行い見解を求めた。フリードマン氏に田中の9月末までの成績と映像を確認してもらうと、次のように回答した。

「(映像を観る限り)彼の状態は最高で、引き続きメジャーでも通用すると感じられます。私は彼のシンカーが特に好きで、この球は打者をも凍らせるほどの威力がありますが、切れ味は相変わらず良いです。また、スプリットやカーブも同様に好調ですね」。

 同氏によれば、今季の田中はメジャー時代と大きな差はないようだという。ただ、「速球はメジャーでみせた速度と動きのままだが、打たれる可能性は多少残っています。また、スライダーの切れ味がたまに平坦になっています」と気になる点は指摘され、「今のメジャーは三振を高く評価しますから、理想としては三振率を高くしてほしいですね」という提言も出た。

 それでも、同氏は、「(本人が望めば)契約を求めるメジャー球団はいくらでもありますよ」と太鼓判を押す。というのも、田中がメジャーで得た豊富な経験は、若い投手にとっても良きメンターやコーチのような存在にもなれ、そういった選手はメジャーでも大変重宝されるからだという。さらに、「(大谷翔平が所属する)ロサンゼルス・エンゼルスが彼を迎え入れたらとても面白いかもしれませんね」という大胆な考えも披露した。実現の有無は別にしても、エンゼルスが投手陣の再建を目指していることを考えれば、田中のエンゼルス入りは案外良いアイデアかもしれない。

 いずれにしても、今回のフリードマン氏への取材から、田中は今でもメジャーで通用する力を十分持っていることが明らかになった。となれば、田中のメジャー復帰は、本人の希望次第となりそうだ。

 アメリカでは依然として、アジア系住民に対するヘイトクライムがあるため、田中の早期のメジャー復帰は難しいかもしれない。しかし、その可能性はゼロではない。それも今年1月末に行われた楽天の入団会見で、田中が「ヤンキースと再契約したかった」と正直な心境を明かし、「アメリカにもやり残したことはある」とも語っていたからだ。

 現地でも熱望される田中のメジャー復帰はいつか実現するだろうか。田中を巡っては、ヤンキースを含めメジャー球団の今後の動向に注目していきたい。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)