相撲を取る子熊の横で身を横たえるホッキョクグマの母。授乳で毎日1キロずつ体重が減るという(写真/大竹英洋)
相撲を取る子熊の横で身を横たえるホッキョクグマの母。授乳で毎日1キロずつ体重が減るという(写真/大竹英洋)
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「大学4年のときのことです。狼が夢に出てきたんです」

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 そう語るのは、昨年刊行した『ノースウッズ 生命を与える大地』で、土門拳賞を受賞した大竹英洋さん。北米の湖水地方で撮影を続け、注目度急上昇中のネイチャー写真家である。

大竹英洋(おおたけ・ひでひろ)/1975年、京都府生まれ、東京都育ち。一橋大学卒業。99年から北米で撮影を続け、『もりはみている』などの写真絵本を上梓。2018年、『そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ』で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞
大竹英洋(おおたけ・ひでひろ)/1975年、京都府生まれ、東京都育ち。一橋大学卒業。99年から北米で撮影を続け、『もりはみている』などの写真絵本を上梓。2018年、『そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ』で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞

 学生時代、写真家になろうと決意したが、何を対象にすればよいのか悩んでいた。そんな頃に見た夢は、深く脳裏に残った。その後でアメリカの写真家ジム・ブランデンバーグ氏が撮った狼の写真集を見て、

「弟子にしてほしいと思い、ダメ元でミネソタ北部まで会いに行きました。弟子入りは断られましたが、一緒に森の中で写真を撮る機会を得られたんです」

 それを機に、ノースウッズと呼ばれる同地に魅了された。子育てをするホッキョクグマ、雄大な角を見せるカリブー、絶滅危機にあったバイソン、雪だまりの中に身を潜めるホッキョクウサギ、子育て中のカラフトフクロウ、メープルの樹液をなめるアカリスなどを撮ってきた。

「多様な生物がいますし、先住民の暮らしぶりも興味深い。人間とは何なのかを考えることができる場所です。20年ほど撮り続けていますが、この間、狼は十数回しか見ていません。狼はこちらに見られたとわかった瞬間に逃げ出すんです。無防備に食べている姿は撮れましたけど、顔の表情を見せてくれるポートレートはまだ。狼の撮影は、ライフワークとして続けていきたいですね」

(取材・文/本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2021年11月5日号