伊沢:将棋にもクイズにも積み重ねることで自分の頭の中の引き出しが増えていき、それをすべて開けて闘う面白みがありますね。

森内:特に記憶に残る問題や戦いはありますか。

伊沢:14歳のとき、北京オリンピック開催前に行われた「第28回全国高等学校クイズ選手権」です。西武ドームでの関東予選の1問目に「いまこの会場から北島康介選手が平泳ぎの世界新記録のタイムで泳ぎ続けたら、北京の会場での開会式に間に合うことができるか?」というマルバツ問題が出た。たしか「着く」が正解でしたが、一問一答で問いづらいタイプの知識量もすくいあげられる良問にクイズの懐の深さを見ました。

森内:いい問題ですね。私はテレビ番組でクイズをした経験はそれほど多くはないのですが、早押しクイズで一瞬の逡巡で負けてしまったことはよく覚えています。

伊沢:負けた記憶って鮮明ですよね。森内先生は棋戦で負けて東京から横浜まで走って帰ったことがあるとか。

森内:そんなこともありましたね、若いころは負けず嫌いだったんです(笑)。最近はCG映像を使うなど、日々新しいスタイルのクイズが出てきますよね。

伊沢:出題は変化しますが、早押しクイズでは「だんだんと選択肢が絞られていく」という点は概ね共通です。その原理を体に強く刻むことが早押しの基本的な攻略法になります。最近の若手はそうした原理を通して世界を見る力に優れており、突き上げがすごいです。

森内:将棋の世界もここ数年でガラッと変わりました。人間が単独で考えていたときは新手が生まれるスピードはそれほど速くなかった。でもいまは毎日行われる多くの対局がコンピューターですぐ解析されるので、それをふまえて次の対局に臨まないといけない。

伊沢:いま自分でクイズを解かずに見て楽しむだけの「見る専」も増えているんです。YouTubeでクイズ大会の動画を解説付きでアップしたら50万回再生されて驚きました。

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