お笑いがライブビジネスだった時代は終わり、いまやコンテンツビジネスの時代になった。芸人の側も、ライブに限らずYouTubeなどいろいろなことをやっていくのが当たり前になってきている。その中の1つとして、ファンクラブやオンラインサロンという形のサービスが始まるのは自然なことだ。

 このようなサービスを先行して始めていたのは、キングコングの西野亮廣やオリエンタルラジオの中田敦彦だった。今では吉本興業を離れてしまった芸人たちが、先駆者としてファンと直接向き合うオンラインサロンを立ち上げていた。

 その後、2020年7月には「チャラ男」芸人のEXITが、音楽アーティストのファンサイト運営を手掛ける株式会社Fanplusの協力を得て、自らのファンクラブを始めていた。

 吉本興業の「FANYコミュ」では、芸人の芸風やキャラクターに合わせて、さまざまな形の月額制のサービスが存在する。かまいたち、NON STYLE、空気階段などが一般的なファンクラブ型のサービスを行っているのに対して、次長課長の河本準一、平成ノブシコブシの吉村崇は、ファンと交流して活動を行うオンラインサロン型のサービスを手がけている。

 いずれにせよ、このような月額課金制のビジネスは、軌道に乗ると一定の収入が得られるというメリットもある。浮き沈みの激しいお笑いの世界では、安定した収入があるというのは大きい。

 もちろん、月額制のサービスで会員を満足させるというのは簡単なことではない。人気のある芸人はテレビで活躍しているし、YouTubeのコンテンツも豊富にあるため、「お笑いはタダで見るもの」という世間の意識も根強い。キャラクターとして魅力がある芸人や、特定の分野に強みがある芸人でなければ、月額制のサービスは成り立たない。

 お笑い業界は、ほかのエンタメに比べるとファンクラブ型のビジネスが遅れているようなところがあった。これからは吉本興業以外でも続々とそのようなサービスが始まるかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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