■ここ数年で登場の新しい薬とは

 慢性期では、心不全の進行を抑えるために、血管を収縮させ血圧を上げるホルモンの働きを抑えて心臓を保護する、ACE阻害薬、ARB(アンジオテンシン2受容体拮抗薬)やアルドステロン拮抗薬といったいくつかの薬が用いられる。

 また、交感神経の活性化を抑え心拍数を下げて心臓を休ませる役割を果たすβ遮断薬も重要だ。

 病状に応じておこなう治療が基本だが、ここ数年で、さらに心不全に対する効果が示された新しい薬が出現してきたという。東京医科大学病院循環器内科心不全外来の中野宏己医師はこう話す。

「心不全の治療は、大まかに言うと、心臓のポンプ機能(左室駆出率)が低下しているかそうでないかで効果の示されている薬が異なりますが、ここ数年、ポンプ機能が低下している症例に対する薬物療法の選択肢が増えています」

 一つ目は、ARNI(サクビトリルバルサルタン)という薬。

「従来のARBに加えて、さらに血管を広げて心臓を保護するホルモンの働きを高める効果がある薬です。ACE阻害薬などの従来の薬より入院や死亡を抑えることが示されました」(中野医師)

 二つ目は、心臓の収縮力を抑えることなく心拍数を下げて心臓を休ませる作用の薬だ。β遮断薬だけでは十分な効果が得られない場合や使用できない場合に用いられる。

「イバブラジンという薬です。HCNチャネル阻害薬というもので、心拍数を下げることに特化した薬です。慢性心不全では、心臓を休ませてポンプの能力を回復させることが大切なので、それに役立つ薬です」(同)

 三つ目は、SGLT2阻害薬という薬だ。

「もともとは糖尿病の薬で、尿を排泄する効果を持ちますが、利尿効果と同時に心臓を保護する効果なども示されており、臨床試験で心不全の患者さんへの効果が認められ、使われるようになった薬です」(同)

 さらに、21年6月には新たに血管拡張物質の産生を促して血管を広げる薬も承認された。

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