「ベルイシグアトという薬で、sGC刺激薬と言われるものです。血管を広げ、心機能を改善させる効果が期待されている新たな薬です」

 このように、ポンプ機能の低下により心不全が進行する病態に対する薬は、その選択肢が増えてきた。今後の課題はポンプ機能が保たれているのに心不全が悪化する症例に対する治療だという。

 薬物療法以外では、低心拍出に対するCRT(心臓再同期療法)という治療がある。これは、重症心不全に対する新しいペースメーカー治療で、心臓のポンプ機能に何らかの障害を持っている人に対して有効な治療だ。

■重症心不全に対する治療法

 心臓左右の心室(心臓の下の部屋)にリード線を入れることで、心臓を左右両側から刺激でき、心臓をより協調して動かすことができる治療だ。心停止時にショックを与え蘇生させる除細動器の機能を併せ持つCRT−Dを使うこともある。

 薬物療法とともに、この治療によっても心不全が改善しない場合には、患者自身、家族などと次なる治療の方針を決めなくてはならない。

「初回の診療のときから、患者さんには多くの場合、一生付き合ってもらう病気であること、だんだん悪くなる可能性もある病気であることなどを理解していただき、心不全の状態が悪化しないようにご自身でも管理してもらう必要があることを説明します。重症化が進んだ場合には、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)といって、最終的にどういった経過をたどりたいか、どんな治療を望むか、今後の生活に何を望むかなど、カウンセリングも必要になります」(泉医師)

 CRT−Dを含めたデバイス治療については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイト「手術数でわかるいい病院」で無料公開しているので参考にしてほしい。https://dot.asahi.com/goodhospital/

(伊波達也)

週刊朝日  2021年11月12日号

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