なぜなのだろう。2年近くにわたるコロナ禍で、女性の置かれている悲惨な状況が明らかになった。女性の6割が非正規雇用で、非正規雇用の7割が女性という現実がある。保育・介護・医療は女性の労働者がいなければ成り立たないが、ケアワーク一般の給与は安く設定されており、昇給も期待できない。生涯賃金でみると、男性と1億円も差があるという。もう個人の力や努力ではどうにもならない、制度を変えなければ、ルールを変えなければ、意識を変えなければ女性はずっと貧しいままであることが見えてきた。

写真はイメージです(c)Getty Images
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 それでも、女性の人権やジェンダー平等をうたう声が届かなかったということの理由を、私たちは考えなければいけないだろう。国際的には重要な政策が、日本の有権者に響かない理由は何か。

「それだけ、女性が疲弊しているからじゃないか」と言う人もいる。あまりにも絶望が深くて、女性が声をあげることすらできないのではないか、と。それも一理あるだろう。でも一方で、声をあげようとする女性は決して少数というわけではない。「ジェンダー平等」を掲げる日本共産党や、「弱音をはける社会へ。」と全国を駆け回った女性党首福島瑞穂さんの支持を表明する若い世代に、選挙を通して出会ってきた。「なぜ、選択的夫婦別姓一つ、できないんですか?」「性犯罪刑法、改正されますよね!?」と目を潤ませながら話しかけてくる真剣な女性たちだ。声をあげられるのは決して彼女たちに「余裕があるから」ではなく、声をあげなくてはもう生きられないというところまで追いつめられているのだということが分かる。実際、社民党は前回2017年よりも比例で票を伸ばしている。

「男性も大変な今、ジェンダー平等になるとより自分たちが大変になると感じる男性が多い」という声もある。一理あるだろう。嫡出推定、強制的夫婦同姓、自己堕胎罪など、女性の人生を縛る性差別的法律が改正されれば、すぐに楽になる女性は大勢いるが、男性はそうではない。制度設計が「イエ」主体、明治以来の男性法律家視線であっても、困る男性は女性ほどではない。

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