都倉俊一さん(左)と林真理子さん  (撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
都倉俊一さん(左)と林真理子さん  (撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

 今年4月に文化庁長官に就任した作曲家の都倉俊一さん。作家・林真理子さんとの対談では、日本の文化のポテンシャリティーについて語りました。

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林:お忙しいところおいでいただいて、ありがとうございます。

都倉:いやいや、とんでもない。

林:4月に文化庁長官に就任されましたが、音楽関係からの文化庁長官は都倉さんが初めてですか。

都倉:初めてです。民間人の長官の初代が今日出海さん(作家)ですね。そのあと三浦朱門さん(作家)とか、芸術家の方もいらっしゃったし、評論家もいらっしゃったけど、民間からの登用は、僕で7人目ですね。

林:文化庁って、予算は潤沢なんですか。

都倉:日本の文化庁の予算は、戦後、荒廃した国土の文化財を守る目的で確保されたものが多くて、補修、修理に関するものが多かったんです。だから、僕がこれからやりたいなと思っている、前向きの予算は多くないんですよ。

林:あら、そうなんですか。

都倉:僕、JASRAC(日本音楽著作権協会)の会長もやっていたことがあるんですけど(2010~16年)、当時JASRACでは、著作権料の徴収が1100億円ぐらいでした。文化庁の予算も同じ1100億円ぐらい。僕は、これから日本が文化立国として成り立つためには、この3倍、4倍の予算が必要になってくると思うんです。だから、いろんなお知恵を皆さんから拝借して、予算を増やしていかなきゃいけない。

林:オリンピックの開会式、閉会式が皆さんから非難ごうごうだったのは記憶に新しいですけど、日本には世界の誰もが知ってるアーティストが少ない、ということなのかもしれませんね。

都倉:ビートルズもいないし、ジェームズ・ボンドもいないから、ロンドン・オリンピックの開会式みたいなことはできないにせよ、日本文化はちまたで、かなり熟成しているはずなんですよ。それをこういう国家的な行事できちんと吸い上げきれなかった、ということだと思うんです。

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