都倉俊一
都倉俊一  (撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

林:そういうことなんですね。

都倉:日本みたいに、こんなに奥が深く、かつ控えめな文化の国って、世界でほかにないと思うんですよ。そういうと聞こえがいいけれど、裏を返せば宣伝力がないということなんです。

林:ええ。

都倉:父が外交官だったので、僕は子どものころドイツの学校に通っていたんですが、たとえば日本から何か伝統芸能が公演しに来ても、翌日学校に行くと、誰も知らないんです。そのときから、「もっと宣伝すればいいじゃないか」って子どもごころに思ってましたね。これからは、日本の文化のポテンシャリティーを、文化庁がうまく引き出して宣伝しなきゃいけないと思います。それで、今いろんな戦略を考えているんです。

林:それは楽しみです。今度、文化庁は京都に移るんですよね。

都倉:22年度中に移ることになっています。

林:そうなんですね。今、京都の祇園も大変みたいですね。

都倉:そうですね。全国の花街を保護するための連合会から、踊りとか三味線などの伝統芸能、食、茶器まで含めた、日本中の花街の文化を、国の力で救ってほしいという要望が来ているんです。

林:素晴らしいじゃないですか。私も舞妓(まいこ)さんに踊ってもらったりするの大好きですよ。

都倉:ポストコロナ時代をどうやって乗り切るか、日本文化をどうやって停滞させないようにするか、今いろいろと話し合っています。アドバイザリーボードみたいな形で、ビジネスマンからクリエーターまで、いろんな分野の人たちの意見を聞いて、できることからやっていこうと思っているんです。いま、芸能は韓国に勢いがあるでしょう。われわれの業界も完全に追い抜かれちゃってますから、危機感がありますよ。

林:私の友達の脚本家の中園ミホさんが言ってましたけど、二十数年前、脚本家何人かが韓国に招待されたんですって。ファーストクラスに乗って、「先生方のお話をいろいろ聞かせてください」って言われて、それも何回も何回もグループで呼ばれて、仕事の仕方だとかいろんなことを聞かれたそうなんです。それが実を結んで、今は完全に抜かれちゃったって。

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