都倉:いま、文化庁で「K-POPの成り立ち」をレクチャーしてるんです。20年ぐらい前に韓国のBoAという歌手が日本で成功して、その後、東方神起もブレークしましたよね。僕、TBSのレコード大賞の審査委員長をずっとやっていて、レコード大賞発表の12月30日、武道館の僕の控室に東方神起のメンバーがあいさつに来たんですが、まるで軍隊みたいだったんです。あまりの礼儀正しさと美しさにびっくりしちゃってね。すべてがパーフェクトなんです。

林:今はBTSが世界を席巻してますね。

都倉:BTSとかBLACKPINKとかね。日本は豊かすぎちゃうんですよ。外に出ていかなくても楽しく暮らしていけるから、狭い世界でゴチョゴチョやってるわけですね。何か危機感を与えないとダメだと思う。

林:ああ、危機感をね。

都倉:最近、日本のアーティストも、中国のアーティストと一緒に中国縦断コンサートをやる人が増えましたね。中国って著作権料をあまり払ってくれないから、知的財産で商売しようとすると苦労するんだけど、ライブはチケット代だからけっこう成り立つんです。たとえば、そういうのに国が補助金を出してあげるとかね。でも、文化庁の予算の中にはそういうお金がないんで、補正を組んで予算をつけてもらわなきゃいけないんですよ。

林:そうそう、都倉さんは、JASRACの会長をなさってたときに辣腕を振るわれたそうですね。

都倉:辣腕というか、僕、けっこう問題意識を持っちゃうほうなんで、「難しい」と言われても、こじ開けたくなっちゃうんですよね。たとえば、サンフランシスコ平和条約(1951年署名)に、著作権の保護期間に戦争の期間をプラスする「戦時加算」という条項があるんですよ。戦争中、日本は米英仏など連合国の著作権を保護しなかったから、連合国の著作権保護期間を約10年5カ月分引き延ばす、という規定なんですが、日本は一部の作品に対して、いまだにそのペナルティーを払っているんです。これはほかの敗戦国にも科せられていない、日本だけのペナルティーなんですよ。

林:まあ、知りませんでした。

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