都倉:これは看過できないと思いましてね。条約を変えるのは現実的に難しいのですが、たとえば、アメリカでは大統領令で凍結することができるんです。それでオバマ大統領のとき、ワシントンに行ってずいぶん運動をしました。
林:そうだったんですか。
都倉:ところが、今度TPP(環太平洋経済連携協定)の加盟国は、著作権の保護を死後70年に統一することにしたんです。日本はそれまで死後50年だったでしょう。
林:はい、そうですね。
都倉:それが70年に延長されることは喜ばしいんだけど、日本だけは戦時加算が約10年プラスされると、80年くらいになっちゃう。かつての連合国に対して、依然としてペナルティーを払わなきゃいけないんですよ。これは日本として承知できませんが、条約を法的に変更することは、現実的じゃない。そこで日本政府は、各国政府に個別で文書を送ったんです。その文書によって、現実的には、戦時加算はほぼ凍結状態になっています。だから、いまのところ、一件落着になっているんです。
林:それはよかったですね。
都倉:ただ、条項を削除するとなると、大変なことなんですよ。僕はそのための活動を10年ぐらいやってきているんです。
林:そういう硬派なことをずっとやってらっしゃったんですね。世界を相手に。
都倉:闘いましたよ。今後は、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に対する取り組みを考えていかなくてはと思っています。アメリカやヨーロッパは、法律を作ってGAFAをある程度コントロールしようとしているんです。
林:そうなんですか。
都倉:GAFAはもう巨大なシステムとして存在していて、ある意味でわれわれの生活を左右する力を持っています。いかにわれわれはこの必要不可欠なパワーと共存し、コントロールされるだけではなく、コントロールするかも考えていかなければなりません。それをしないと世界から置いていかれます。中国や韓国などのアジア圏にもね。