デイサービス「ラスベガス」
デイサービス「ラスベガス」
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 折り紙に風船バレー。デイサービスに、子ども扱いされるイメージを抱くシニアは少なくない。特に男性は抵抗を感じやすく、一般的に利用者の7割ほどは女性だ。この状況を変えようと、男性目線で運営する施設がある。

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 扉を開けると、レディー・ガガのアップテンポなナンバー「Born This Way」が流れる中、シニアたちが体操に励んでいた。周りには全自動の麻雀卓やパチスロの台がずらりとならぶ。

 全国に23店舗を展開するデイサービス、「ラスベガス」。“カジノ”を楽しめることで男性からの人気が高く、チェーン全体で約1200人いる利用者のうち7割が男性だ。1号店として2013年にオープンした、東京の足立店を取材した。

 ブラックジャックテーブルを囲む4人の男性は、真剣な面持ちでカードを見つめていた。白シャツに黒ベスト姿のディーラーが「お、ここで賭ける! 勝ったらでかいですよ」と場を盛り上げる。男性たちは「一気に入ったよ」とにんまりしたり、「はーだめだ」と頭を抱えたりと一喜一憂していた。

 施設内では、オリジナル通貨「ベガス」が流通している。体操に参加すると1万ベガスがもらえ、それを元手にカジノを楽しめる。稼いだ額に応じて表彰されるので、みな勝負に熱が入る。

 ラスベガスを運営する日本シニアライフ株式会社は、00年からデイサービス事業を始めた。当初は“従来型”のサービスを提供していたが、社長の森薫さんは現場で課題を感じていた。

「男性は自尊心が高い傾向があり、童謡を歌ったり塗り絵をしたりというプログラムは受け入れづらい。次第に足が遠のいて体が衰え、要介護度が上がる人もいました」

 そんな中、米国を訪れた際にラスベガスのカジノで見た光景に衝撃を受けた。客の大半が高齢者で、杖をついたり車いすに乗ったりしながら、生き生きと輝いていた。

「これだ!」と思った森社長はシンガポールやマカオなど各国のカジノを視察し、約2年後にラスベガスを立ち上げた。

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