ハエ。

 僕はおかしくなってしまったのでしょうか。ハエの役が、なんだかとても、まともに思えます。ウンコやトイレットペーパーに比べれば、もはやいい役とさえ思います。ブーンて言いました。ブーン、ブンブーンて。ハエだから。誠心誠意、ブーン、ブンブーンて言ったよ。母さん、俺やったよ。ハエの役を全力でやり切ったよ。東京に出てきてから30年。俺、ハエをやったんだよ母さん。

 地球。

 もう、なにを感じながら読み進めればいいか分からなくなってるそこのアナタ、お気持ちお察し致します。ただ、その前に、察せ。俺の気持ちを察せ。トイレットペーパー、ウンコ、ハエときて、地球をやらされる俺の心情を察せ。大体、地球の役ってなんだ。役づくりとはなんだ。地球の役づくりってなんだ。確か、緯度、経度を扱った回だと記憶してますが定かではありません。きっとあまりのことに自衛本能が働いて記憶を曖昧にしたのでしょう。たぶん、なんか、自転したと思う。地球だから。

 実はこれらは氷山の一角でして、他にも、幼稚園児、銭湯に行くおばちゃん、ギャル、孫悟空、ラッパー、雷さま、北風、花粉、アスファルト、などなどを演じ(?)ました。

 ちょうど昨日、収録があったのですが、昨日は、赤ちゃん、神さま、火、木、などを演じ(?)ました。もはや怖いものなどありません。

 かようにハードルが高いか低いかさえ分からない、もはや不条理の域に達した役を演じております。金曜日の朝に、教養と、ほんの少しの笑いをご提供できれば。「マチスコープ」、どうぞお引き立てを。

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける。原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)が全国公開中。

著者プロフィールを見る
佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

佐藤二朗の記事一覧はこちら