個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、最近演じる多種多様な役について。
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37歳で大学生。
歌舞伎町のホスト。
コレ、今までに僕がやった役で、僕にとってハードルが高かった役、ツートップです。
しかし最近、そのツートップをも凌ぐ、というかハードルが高いのか低いのかさえ分からない、もはや不条理の域に達する役をやっています。
毎週金曜日の朝(土曜日の朝は再放送)にNHKのEテレで放送中の「マチスコープ」という番組。
街の不思議や謎を「マチスコープ」という道具で解き明かす、教養番組。
子供が、そのマチスコープを覗くと、街のあらゆる場所の成り立ちや仕組み、歴史なんかも分かるという、子供も大人も、その知的好奇心を大いに刺激させられるであろう内容です。
とまあ、内容的にはその通りなんですが、この番組で僕がやる数々の役が、もうなんというか、なんともいえない感じなんです。
トイレットペーパー。
いきなりなんだとお思いでしょう。なんでいきなりトイレットペーパーなんだ、と。あのですね、役です。僕が演じた役です。トイレットペーパーの役を僕が演じたんです。トイレットペーパーをどう演じるのが正解か、皆目見当がつきませんが、とにかくトイレットペーパーを僕は演じました。しかも下水道を流れるトイレットペーパーです。そんなもん、どう演じたらいいんだ。世界広しといえど、下水道を流れるトイレットペーパー役を演じた俳優は僕一人でしょう。
ウンコ。
あのぉ、ふざけてるわけではありません。ごめんなさい多少はふざけようとしてますが、しかし事実を粛々と書いています。ウンコです。はい。皆さんご存知の、あの、ウンコです。まさかと思ってるアナタ。正解。役です。僕が演じた役です。ウンコを僕は演じました。息子はその回を見て、ゲラゲラ笑ってました。当たり前です。父親がテレビでウンコの役をやっていたら、そら笑うでしょう。それか泣くでしょう。泣かれなくて良かった。父の心は泣いていましたが。ウンコを演じながら泣いていましたが。ウンコとして下水道を流れながら、52歳のハートは涙で濡れておりましたが。「朝から下水道を流れる佐藤二朗を放送するEテレの本気」という意見がネットで頻出したのも頷けます。