ニューヨーカー誌のデービット・ロード氏(提供)
ニューヨーカー誌のデービット・ロード氏(提供)

 米発行部数監査機関AAM(Alliance for Audited Media)によると、紙媒体とデジタル版を合わせたサブスク数は、ペイウォール導入前には100万人ほどであったのが、2021年6月時点では130万人近くまで増加。

 同時期のデジタル・サブスク数だけを比べると7年間で約9万人から、約32万人と3倍以上となっている。その内10万人近くは、コロナ禍まっただなかの2020年6月からの1年間で急増した(一方、紙媒体の購読者数はこの1年間で、6万人ほど減少)。

「読者からの根強い支持のおかげで、ニューヨーカー誌は(コロナ禍を)耐え忍ぶことができた」とリンチ氏は語っている。

■デジタル化で変わる伝え方の多様化

 では、なぜ多くの雑誌・新聞が年々読者を失っているのに、ニューヨーカー誌は読者からの根強い支持を集めているのだろうか?ニューヨーカー誌デジタル版のエグゼクティブ・エディター、デービッド・ロード氏を取材した。

 「優れた物語を伝える力(ストーリー・テリング)」と「伝え方の多様化」にあると、ロード氏は答える。

「紙面であろうが、デジタルであろうが、ストーリーを伝える能力の重要性は同じです。しかし、デジタル化によって多様な媒体を使えるようになり、(読者の)興味を引くために伝え方の幅が格段に増えました」(ロード氏)

 ニューヨーカー誌はアメリカの活字・デジタルメディア界で最高峰とされるピューリッツァー賞の受賞経験もあり、クオリティーの高い報道で知られているが、著名なコラムニストを数多く抱えていることでも有名である。ロード氏は、デジタル版でしか読めない政治・経済・カルチャーなど専門性の高いコラムを求めて、多くの読者が同サイトに来るという。

 また、同氏によると調査報道も人気のコンテンツだという。ビデオ部門と協力し、自身も編集に関わった中国におけるウイグル族の強制収容所のテーマを扱ったストーリーでは、同サイトでは初となるVR(仮想現実)ビデオを今年初旬に公開した。

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