かつて「ニューヨーカー」に寄稿したJ・D・サリンジャー氏(C)朝日新聞社
かつて「ニューヨーカー」に寄稿したJ・D・サリンジャー氏(C)朝日新聞社

 7000字近くの記事とともに、アニメーションや実際のインタビューの音声を使った20分ほどの動画を掲載し、読者からは大きな反響が寄せられた。米メディア業界誌アドウィークによると、普段の動画の2倍以上のアクセス数を記録し、サブスク数も急増したという。

ニューヨーカーのホームページ

 ロード氏は、デジタル版における購読者の獲得には、クオリティーの高い動画の掲載が非常に重要な役割を果たしていると語るが、それ以外にもニューヨーク市の地元ラジオ局と提携をして、ポッドキャストなどの音声メディア配信をするなど、部署や媒体を超えて様々な形で情報を発信することに力を入れている。

 さらに、紙媒体に掲載される記事以外にも、デジタル版でしか読むことの出来ない独自の記事やコラム、漫画など、1日10~15本ほどアップして、週一で出版される紙媒体との差別化を図っているという。

■SNSで若い読者の獲得

 アメリカで「ニューヨーカー誌」と聞くと、年齢層の高いエリート層の読む雑誌というイメージが強いが、デジタル化で読者層は若者にも広まっているという。

 米世論調査会社モーニング・コンサルトが昨年12月に、2020年の一年間で急成長を遂げたブランドの世代別トップ20位を発表したが、Z世代(18~23歳)の間ではZoom(ズーム)やTikTok(ティックトック)の後を追って、14位にニューヨーカー誌もランクインしている。

 リンチCEOはインスタグラムなどのSNSを通して、積極的にこうした若い読者層の獲得に取り組んでいるという。現在、同誌のツイッター・フォロワー数は890万人、インスタグラムは640万人いるが、前述のロード氏もこの先ニューヨーカー誌が成長し続けるには、こうしたプラットフォームを使って、次世代の読者層をデジタル版に取り込むことが非常に重要であると強調する。

 ニューヨーカー誌は質の高い長文記事でも知られているが、デジタル版に掲載する際には読みやすいように記事を短めにして若い読者に配慮したり、SEO(Search Engine Optimization=検索エンジン最適化)に効果的な記事の見出しを付けたりするなど、紙媒体とは違った工夫をこらしていると同氏はいう。 

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